野外調査研究所              戻る

設立趣旨書

 現在、人類の活動は地球規模で資源を浪費し、自然環境を破壊・悪化させ、他の生物だけでなく

人類自らの生存すら脅かすような事態に立ち至っています。また当の人間社会は、産業化・情報化

のなかで過去営々と築き上げてきたかけがえのない文化までも、喪失しようとしています。生活様式

の加速化と複雑化は、その趨勢にさらに拍車をかけようとしています。日本においては、人口の都市

集中と農・漁・山村の過疎現象も加わって、自然的にも人文的にも、大きな変化を余儀なくされ、貴重

な学術資源や文化資源が散逸・消滅の危機に瀕しているものが枚挙に暇がありません。そのいっぽう

で、土地利用や環境事業に関係する行政や企業、教育に携わる方々も、それらの知識や活用の

ノウハウをじゅうぶん会得していないがために、看過したり、破壊や改悪を進行させたりしていることも

大きな損失です。21世紀に生きる私たちは、このような20世紀の“負の遺産”を早く克服し、健康な

環境のもとで暮らせていけるよう、努めなくてはなりません。

 そこでまず、必要なことは各地域固有の自然環境や人文資源を調査・記録・蓄積し、情報提供できる

ようなシステムを構築することが急務です。そのためには、行政や企業に対して、性急な見返りや提供

を期待するだけでなく、私たち住民・市民側も、広い層の方々の力を結集して、行動に移していくことが

求められているのではないでしょうか。その行動を推進する場合、民間サイドで問題となるのは指導者

不足の問題です。また、行政・企業・教育界の現場においても、中堅指導者層の不足は深刻な問題です。

さらにまた、週休2日制に伴う余暇利用、地域学習の機会は大人・子供を問わず、増大してきているに

もかかわらず、その受け皿は各地で不足している現状にあります。

 それらのことを憂う私たち有志は、各地の研究者・機関とのネットワークのもと、広い視野に立って、

これらの問題に取り組むためにNPOを組織し、これらの調査と情報提供、指導者の養成を推進して

まいりたいと考えております。また推進に当たっては、諸研究機関の指導・協力を仰ぐいっぽう、民間に

あって素晴らしい能力を持ちながらも、発表・行使の機会に恵まれない方々(専門家、指導者、技能者)

にも参画してもらうとともに、調査に併行して行政・企業・教育関係者も受け入れて、中堅指導者(インス

トラクター)の養成を図ってまいりたいと存じます。

 この法人が、これらの活動を通して社会に貢献できることは、人間の生存を保障する環境改善や、

野生生物との共生・共存、文化的風土の醸成、伝統文化や文化財の保存・活用、地域力の発掘・高揚、

生きがいの感得、雇用の創出、教育や博物館事業への支援など、多方面にわたり寄与することができます。

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